スギ・ダニアレルギーの舌下免疫療法 Q&A
例年2月から4月にかけて、多くの方から花粉症についてのご相談をいただいております。
花粉症治療では、内服薬や点鼻薬などで症状をコントロールできる方も多くいらっしゃいますが、
中には複数のお薬を使用しても症状が十分に改善せず、重症の方では注射製剤であるゾレアなどの治療を選択される場合もあります。
その一方で、
「毎年薬とにかく症状がつらい」
「できれば根本的に改善したい」
とお考えの方におすすめしている治療が舌下免疫療法(ぜっかめんえきりょうほう)です。
舌下免疫療法は、花粉症やダニアレルギーに対して体質改善を目指す治療法であり、
症状を一時的に抑えるだけでなく、将来的な症状軽減や薬の減量が期待できます。
このページでは、舌下免疫療法について患者様からよくいただくご質問をQ&A形式でまとめました。
治療をご検討中の方はぜひ参考になさってください。
Q1. 舌下免疫療法とはどんな治療ですか?
舌下免疫療法は、
アレルギーの原因となる成分を少しずつ体に慣らしていくことで、アレルギー症状を起こしにくくする治療法です。
アレルギーの原因物質(アレルゲン)を毎日少量ずつ舌の下に投与し、継続することで、
- アレルギー反応を起こしにくい体質へ変えていく
- 症状そのものを軽くする
- 将来的な薬の量を減らす
ことが期待できます。
一般的なお薬が「症状を抑える治療」であるのに対し、舌下免疫療法は体質改善を目指す“根本治療”です。
Q2. 舌下免疫療法はなぜ効くのですか?
舌下免疫療法では、アレルギーの原因となる成分を少しずつ取り入れることで、
免疫の過剰な反応を抑え、アレルギーを起こしにくい体質へ変えていきます。
私たちの体には「免疫」という、異物から身を守る仕組みがあります。
しかし花粉症やダニアレルギーでは、本来害のない花粉やダニに対しても過剰に反応してしまっています。
舌下免疫療法では、
- アレルギーに慣れさせる
- 免疫のバランスを整える
- アレルギー反応を起こしにくくする抗体を増やす
ことで、少しずつ症状が出にくくなっていきます。
そのため、
症状を一時的に抑えるだけではなく、アレルギー体質そのものの改善が期待できます。
※舌下免疫療法の作用機序です。上述した内容の具体的なメカニズムになります。
Q3. どんな人が治療できますか?(適応について)
スギまたはダニアレルギーの2種類のみが保険診療の対象です。
血液検査や皮膚検査で原因アレルゲンが確認されている必要があります。
Q4. 舌下免疫療法はいつから始めればよいですか?
舌下免疫療法は開始時期が決まっています。
スギ花粉症の場合
スギ花粉が飛んでいない時期(6月~11月頃)に開始します。
花粉飛散中は副作用が出やすくなるため、開始できません。
ダニアレルギーの場合
年間を通して開始可能です。
※ただし、花粉やダニ飛散シーズン中で症状がある場合は開始を避けたほうが望ましいです。
Q5. 何歳から治療できますか?
舌下免疫療法は、一般的に5歳以上から適応となります。
ただし、
- 毎日きちんと継続できること
- 副作用時に症状を伝えられること
- ご本人・ご家族が治療を理解できること
が必要です。
そのため、年齢だけでなく、継続できるかどうかも重要な判断基準になります。
Q6. 舌下免疫療法はどれくらい効果がありますか?
個人差はありますが、多くの研究で
- 約70~80%の方で症状改善
- 約20%前後の方ではかなり症状が軽くなる
と報告されています。
特に、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、目のかゆみなどの改善が期待できます。
ただし、すべての方に必ず効くわけではなく、効果の出方には個人差があります。
Q7. どのくらい治療を続ける必要がありますか?
一般的には3~5年間の継続が推奨されています。
研究では、
- 1年未満では十分な効果が得られにくい
- 3年以上続けることで治療終了後も効果が持続しやすい
ことが分かっています。
Q8. 始めたい場合はどのようにしたらいいですか?
以下に当院で舌下免疫療法を開始する場合の流れをご説明いたします。
①初回診察・採血検査 :
まずは診察を行い、舌下免疫療法の適応があるか確認します。
そのうえで採血を行い、スギ花粉症かどうかを検査します。
※3年以内の採血データがございましたら、そちらでも診断可能です。
※採血結果によっては舌下免疫療法の適応とならない場合があります。
②結果説明 :
2回目の診察で採血結果をご説明します。
スギ花粉症と診断された場合、6月以降より舌下免疫療法を開始できます。
※スギ舌下免疫療法は花粉飛散時期を避けて開始する必要があります。
③処方:
お薬の処方 開始が決まりましたら処方箋をお渡ししますので、 薬局でお薬をお受け取りください。
④初回投与(院内):
初回のみ院内で実際に服用していただきます。
服用後は30分院内で待機していただき、 アレルギー反応や副作用がないことを確認してからご帰宅となります。
⑤定期通院 :
初回投与から2~4週間後に副作用を確認いたします。問題なければ、以降は6週間ごとに通院していただき、 症状や副作用を確認しながら継続していきます。
※処方当日に初回内服をご希望の場合
処方日と初回投与日を同日にご希望の場合は、
薬局でお薬を受け取った後、再度当院へお戻りいただき、そのまま院内で初回内服していただくことも可能です。
その場合、院内での初回投与対応時間は以下の通りとなります。
- 午前:9:00~11:00
- 午後:15:00~17:00
上記時間を過ぎた場合は、安全管理上、当日の初回内服対応はできかねます。
その際は別日に改めてご来院をお願いしております。
あらかじめご了承ください。
Q9. 通院頻度はどのくらいですか?
医療機関ごとで異なります。当院では、舌下免疫療法の処方は最大6週間までとさせていただいております。
舌下免疫療法は、毎日継続して行うことで効果が得られる治療であり、同時に副作用の確認や、正しく継続できているか(アドヒアランス)の確認も重要です。
日本アレルギー学会のアレルゲン免疫療法の手引きにおいても、「定期的に受診しながら継続すること」「医師が継続的に症状や副作用を確認すること」が推奨されています。
そのため当院では、
定期的に状態を確認しながら安全に治療を継続するため、処方日数の上限を6週間としています。
なお、海外出張や長期のご旅行などやむを得ない事情がある場合には、処方日数を調整することも可能です。ご希望の際は診察時にご相談ください。
Q10. 治療終了はどう判断しますか?
明確な全国統一基準はありませんが、一般的には以下を総合して判断します。
終了判断の目安
- 3年以上継続できている
- 花粉/アレルギー症状が十分改善している
- 抗アレルギー薬の内服使用量が減っている
- 患者さん本人が効果を実感している
つまり、
血液検査ではなく、実際の症状改善を重視して判断します。
Q11. 治療終了後にスギやダニのIgE抗体を測り直す必要はありますか?
基本的に、治療終了時に改めてIgE抗体を測定する必要はありません。
舌下免疫療法では、症状の改善度とIgE抗体値の変化には明確な相関がないことが報告されています。
そのため、「IgEが下がったから治療成功」または「IgEが高いから治療失敗」とは判断できません。
舌下免疫療法の効果判定や終了判断は、
血液検査ではなく、実際の症状改善をもとに総合的に判断します。
このため、治療終了時にIgE抗体の再測定は通常不要です。
Q12. 治療をやめた後も効果は続きますか?
はい。
舌下免疫療法の特徴として、治療終了後もしばらく効果が継続します。
研究では、3年以上継続した方では、終了後も最低2年間は効果が持続すると報告されています。
ただし、永久に効果が続く保証はなく、また数年後に再び症状が出る可能性もあります。
そのため、将来的な再燃の可能性も踏まえたうえで治療をご検討いただくことが大切です。
Q13. 治療を途中でやめました。再開する場合はどうしたらよいでしょうか?
治療を中断してから期間が空いている場合は、安全のため、少量投与(初回導入量)から再開することがあります。
これは、休薬期間が長いとお身体が薬に慣れた状態ではなくなっている可能性があるためです。
また、休薬期間の長さによっては、改めて長期治療(3年以上)を前提として再開をご案内する場合があります。
再開方法は休薬期間や症状によって異なります。
詳しくは初回開始時にご説明致します。
Q14.舌下治療を始めました。もう抗アレルギー薬は飲まなくていいですか?
舌下免疫療法は、アレルギー症状の軽減に有効な治療とされていますが、
治療を開始したからといってすぐに症状が完全になくなるわけではありません。
また、花粉の飛散量、治療継続期間、その年の症状の強さによっては、舌下免疫療法を行っていてもアレルギー症状が出ることがあります。
そのため、
花粉シーズン中に症状がある場合は、舌下治療中であっても抗アレルギー薬の併用をおすすめすることがあります。
さらに、舌下免疫療法開始直後は、
副作用軽減を目的として、開始後数週間は抗アレルギー薬の併用を推奨する場合があります。
症状や治療経過に応じて必要なお薬は異なりますので、詳しくは診察時にご相談ください。
Q15. 注意点はありますか?
毎日継続が必要です
飲み忘れが多いと効果が下がる可能性があります。
効果が出るまで時間がかかります
開始後すぐではなく、数か月~1年程度かけて徐々に効果が出ます。
副作用があります
特に開始初期に口の中のかゆみ、のどの違和感、軽い腫れなどが出ることがあります。
Q16. 費用はどれくらいかかりますか?
3割負担の方で目安として、以下になります。
| シダキュア (スギ舌下免疫療法) | 約1300円(1か月) |
| ミティキュア(ダニ舌下免疫療法) | 約1800円(1か月) |
※別途診察料がかかります。
※処方日数・保険負担割合により変動します。
Q17. オンライン診療はできますか?
当院では、状態が安定している患者様についてはオンライン診療でも対応可能です。。
ただし、
- 初回導入時
- 副作用確認が必要な時
- 症状変化がある時
は対面診療が必要です。
詳しくは受診時にご相談ください。
参考文献
- 鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版
- 日本アレルギー学会「アレルゲン免疫療法の手引き」
- Durham SR, et al. Long-term clinical efficacy of grass-pollen immunotherapy. N Engl J Med. 1999
- Okamoto Y, et al. Efficacy of sublingual immunotherapy for Japanese cedar pollinosis. Allergol Int. 2015
