秋から冬にかけて悪化しやすい
「気管支喘息・咳喘息」
― つらい咳は、早めの呼吸器内科受診を ―
朝晩の冷え込みが強くなり、空気が乾燥してくる10〜11月。 この時期になると、「咳が止まらない」「夜になると咳が出る」
「風邪をひいてからずっと咳が続いている」といったご相談が一気に増えてきます。
その背景には、気管支喘息や咳喘息の悪化が隠れていることが少なくありません。
1.咳喘息とは?
咳喘息は、喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒュー音)を伴わず、長引く咳だけが続くタイプの喘息です。気道が慢性的に炎症を起こして過敏になっており、冷たい空気やタバコの煙、花粉、ハウスダストなど、わずかな刺激でも咳が出やすくなります。
風邪をきっかけに発症することも多く、「風邪が治ったのに3週間以上咳が続く」ときは、この咳喘息の可能性があります。治療をせず放置していると、数年のうちに本格的な喘息(気管支喘息)へ移行することもあります。早めに気づき、適切に治療を行うことが大切です。
2.気管支喘息とは?
気管支喘息は、気道の炎症によって呼吸がしづらくなる病気です。咳だけでなく、夜や明け方に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった喘鳴を伴うことがあります。
発作のきっかけは、季節の変わり目、花粉、ダニ、風邪、気温差、運動、ストレスなどさまざま。とくに10〜11月は、気温の低下とダニ・ハウスダストの増加が重なり、悪化しやすい時期といわれています。
こんな始まり方にも要注意
- 普段より大きく息を吸わなくてはならない
- 喉がつかえる
- 声が枯れる
一見軽い症状でも、喘息の初期サインのことがあります。
3.この時期に症状が悪化しやすい理由
秋から冬にかけての空気は乾燥しており、気道の粘膜が敏感になりやすくなります。さらに、朝晩の寒暖差が大きくなることで自律神経のバランスが乱れ、気道が収縮しやすくなります。加えて、風邪やインフルエンザなどのウイルス感染も喘息悪化の大きな要因です。
毎年この時期に咳や息苦しさが出る方は、季節性の喘息悪化(seasonal exacerbation)が起きている可能性があります。
4.主な治療と予防のポイント
喘息や咳喘息の治療では、吸入ステロイド薬や気管支拡張薬、抗ロイコトリエン薬が中心になります。表面的に気管支の炎症が取れると症状が改善しますが、実は「咳が落ち着いたから」と自己判断で中断すると再燃しやすいため、症状がないときも継続して使うことが大切です。
予防のための生活のコツ
- 外出時はマスクで冷たい空気を直接吸わない
- 室内の湿度を50〜60%に保つ(加湿しすぎのカビ発生にも注意)
- 寝室やカーペットのダニ・ハウスダストを定期的に掃除する
- 風邪やインフルエンザの予防(ワクチン接種)を行う
- 処方薬を正しく継続する(中断は再燃の原因に)
5.受診の目安
- 咳が2〜3週間以上続く
- 毎年同じ時期に症状が出る
- 発熱や膿性鼻汁・痰など、他の風邪症状を伴わない
- 夜や明け方に咳が強くなる
- 冷たい空気や会話・笑いで咳が出る
- 家族に喘息の方がいる
- ぜん息治療を中断したら再び咳が出てきた
- 市販の咳止めを服用してもつらい
6.最後に
「長引く咳は、風邪の名残」と思われがちですが、実は喘息のサインであることも多くあります。放置した結果、年々呼吸機能が低下していく方もいらっしゃいます。しっかり診断し、正しい治療と予防で、安心して季節の変わり目を過ごしましょう。
※このブログは一般的な医療情報の提供を目的としています。症状や治療方針は個々の状態により異なりますので、気になる症状がある場合は医師にご相談ください。
(執筆:呼吸器内科専門医・アレルギー専門医 ハピコワクリニック五反田・田町三田駅前内科・呼吸器内科・アレルギー内科 岸本 久美子)





