咳や喉の痛み、それって逆流性食道炎(GERD)かも?
近年増加傾向にある逆流性食道炎(GERD)、その言葉を見聞きしている人も多くなってきました。ゲップや胸焼けだけでなく、逆流性食道炎(GERD)は咳や喉にも関連していることを知っていますか?このページでは逆流性食道炎(GERD)と咳や喉の痛みについて詳しく解説していきます。
逆流性食道炎(GERD)とは?
逆流性食道炎はGastro Esophageal Reflux Diseaseの頭文字をとってGERDガードと呼ばれています。もともと欧米人に多く見られ日本人は少数とされてきた病気なのですが、食の欧米化や病気の認知、日本人の体質の変化などから、ここ20年ほどで急増し、成人日本人のおよそ20%くらいの方がかかっていると言われています。
逆流性食道炎(GERD)は読んで字のごとく、胃酸が食道へ逆流することです。これによりゲップや胸焼け、呑酸(どんさん)(口の中に酸っぱいものがこみ上げてくる)などの症状が起こります。本来なら食道は胃酸にさらされることがないため、胃酸をバリアする機能が備わっていません。ところが逆流性食道炎で胃酸にさらされることで食道の粘膜がただれてしまい、咳が出たり喉に異常をきたします。健康な人でも食後など胃酸が食道に逆流することもありますが、すぐに胃に戻す働きが正常に稼働しているため、食道に長い時間胃酸がとどまる事はありません。
逆流性食道炎(GERD)は胃酸の逆流を阻止する機能が低下したり、胃酸が過剰に分泌されることで起こります。その原因は主に食習慣、姿勢、喫煙、飲酒、肥満、ストレスなど生活習慣によるものとされています。
よく知られている逆流性食道炎(GERD)の症状
逆流性食道炎(GERD)は胸焼けと呑酸(どんさん)、ゲップが主な症状として知られています。逆流性食道炎(GERD)には症状があっても食道炎(食道粘膜がただれていること)を起こしていない場合、食道炎も症状もある場合、食道炎はあるのに症状がない場合とに分けられ、特に命に関わる重篤な病気というわけではありません。ところが食道炎は繰り返すことによりパレット食道という食道がんに進展する恐れのある状態になったり、胸やけがひどくなり、咳が続くと眠れなくなります。不眠症は生活の質(QOL)を落とすことになり、様々な病気になる引き金にもなってしまいます。逆流性食道炎(GERD)を疑う症状がある時には早めに受診し治療をしていくことが大切です。
咳や喉の違和感もある逆流性食道炎(GERD)
咳、喉の違和感、声のかすれ胸痛なども逆流性食道炎(GERD)の症状です。これらの症状はよく、季節性のかぜや感染症、アレルギーとして対処してしまう人も多くいらっしゃいます。
事実、逆流性食道炎(GERD)による咳とぜん息の咳の鑑別は難しく、ぜん息と併存していることがあります。咳が出ることによって胃酸の逆流を促進し、胃酸の刺激が咳を悪化させてしまうという悪循環に陥ってしまうので、逆流性食道炎(GERD)が考えられる咳にはすぐに治療が必要となります。また、これらの症状は肥満が悪化する原因とされているため、特に中年以降の方は注意が必要です。
逆流性食道炎(GERD)の治療
逆流性食道炎(GERD)の原因は生活習慣改善によって防げることが多いです。油っぽいものを沢山食べる、お酒を沢山飲む、タバコを吸う、などはすぐに見直しができると思います。タバコに含まれるニコチンは胃酸の分泌量を増加させ、アルコールは食べ物を食道から下部へ送り出す運動を阻害します。炭酸も胃の逆流を促進することがあるため、飲み過ぎには注意です。
また、逆流性食道炎(GERD)は姿勢が大きく関与します。猫背や常に前かがみになり胃を圧迫する姿勢、食べてすぐ横になる姿勢は逆流性食道炎(GERD)を引き起こしやすいです。就寝前の3時間前には食事を終わらせるようにしましょう。ストレスによって自律神経が乱れると胃酸が過剰に分泌され、逆流性食道炎(GERD)を促進させるので運動などストレスを解消させることも大切です。運動は肥満防止にもなるため、特に中高年の方には有意義なストレス解消法となります。
薬物療法としては食道の粘膜を保護するお薬、胃酸の分泌を抑えるお薬、食道や胃の働きを整えるお薬などがあります。咳の症状が激しい場合には、一度呼吸器専門医のもと詳しい検査をしましょう。ぜん息を併発している場合には、ぜん息をコントロールするお薬が必要となります。逆流性食道炎(GERD)は食道のみならず気管支にも刺激を与え、ぜん息を元々持っている方は特に注意が必要です。
咳から逆流性食道炎(GERD)を想像する人はまだ少ないかもしれませんが、咳が症状に現れた場合には気管支にも影響があり、放置することで呼吸器系の病気を誘発する恐れがあります。気になる症状の方は呼吸器専門医への受診をお勧めします。